介護制度と現実の矛盾

不自然な姿勢で寝ていたのを改善したことで夜間の家族の負担は減ってきた。週末の介護の手伝いをする中で色々学ぶことが多い。

さて、以前にも福祉について書いたことがあるが、今回もちょっと(怒)なことがあったので書き残しておこう。

厚生労働省のサイトに行き、「持続可能な介護保険制度の構築」という資料を見るとそこには当然ように「基本理念」が書かれています。基本理念とは高齢者の

  • 自立支援
  • 尊厳の保持

とある。この資料は今年の国会に提出予定のものではあるが、基本理念である以上は当然これまでもずっとこれを念頭に制度を作ってきたものと思う。

しかし、実際には介護保険制度が動きだし、福祉の世界に消費者原理が導入されるとそんな理念はどこ吹く風、デイサービスセンターに行くとどこかの業者に製品を必要もないのに売り付けられたりするような実態がある(実際には業者が売り付けた、という形にならないように施設側が配慮している可能性もあるが、少なくとも買わなければならないような心理状態に追い込んでいる現実がある)。

売り付けられる製品は「自立支援」「尊厳の保持」とは全く正反対の寝たきり老人のための製品だ。

消費者原理の導入全てが悪いとは思わない。しかし、このような実態が罷り通るようなのであれば、大きな問題である。

福祉分野はある程度の消費者原理と、消費税などを福祉目的税とした財源によるハイブリッド財源による運用が望ましいのではないか。

「自立支援」とは老人が自らの力で日々の生活を送るために必要な支援をすることであって、本来不要なサービスを提供するというものでは無い筈だ。サービスの中には体の動かせる老人の「自立支援」と矛盾するものもある(寝たきりの場合は矛盾しない)。そのようなサービスは「提供しない」のが「自立支援」のあるべき姿だ。しかし、サービスを提供する側からするとその分売上の減少となるため、そうならないようにするために不要なサービスを売り付ける形となってしまう。そうならないためにはやはり福祉目的税などによる財源が必要となるのではないだろうか?

そういう目的のはっきりした、将来像の示せる部分の税金の増税なら納得が行く。増税論議をするなら、はっきりとした将来のビジョンを示さなければ誰も納得なんてできない。